AGA発症したら終わりは嘘!進行を止める正しいステップ
「AGAは発症したら終わり」といった言葉を耳にして、不安を感じる方も少なくありません。 しかし、このような情報は正確ではありません。
AGA(男性型脱毛症)は、進行性の脱毛症の一種とされていますが、発症後も医師の診察や適切なケアによって、進行を抑えたり、薄毛の目立ち方を軽減したりできる可能性があります。
AGAは生活習慣や体質など、さまざまな要因が関係しており、完全に治るというものではありません。ただし、医療機関での治療や日常のセルフケアを継続することで、髪の状態を安定させやすくなるケースもあります。
また、治療やケアの効果には個人差があり、すべての人に同じ結果が得られるわけではありません。そのため、自己判断で情報を鵜呑みにするのではなく、気になる症状がある場合は早めに専門医へ相談することが大切です。
本記事では、AGAを発症したあとに進行を抑えるための基本的な考え方や、治療を続ける際に知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
監修者

天白橋内科内視鏡クリニック院長
野田 久嗣 Hisatsugu Noda
医学博士
日本内科学会認定内科医
日本消化器病学会消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
がん治療認定医
AGA発症したら終わりは誤解

AGAは発症しても、治療によって改善が期待できる脱毛症です。「発症したら終わり」と言われる理由と、実際の治療効果を正しく知っておきましょう。
参照元:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
AGAは治療で改善できる脱毛症
AGAは進行性の脱毛症ですが、治療によって抜け毛を減らし、発毛を促すことができます。治療薬には「抜け毛を防ぐ薬」と「発毛を促す薬」の2種類があり、これらを組み合わせることでヘアサイクルの正常化を目指します。
髪の成長期が短くなっているAGAの状態を、薬の作用で本来の周期に近づけることが可能です。治療を始めるタイミングが早いほど、元の毛量を取り戻しやすくなります。毛根がまだ生きている状態であれば、治療による改善が期待できます。
完治しにくい理由と対処法の違い
AGAは、現時点の医学的な知見では完全に治すことが難しい脱毛症とされています。これは、男性ホルモンの影響が長期的に続くためです。
男性ホルモンの一種であるテストステロンは、体内の酵素(5αリダクターゼ)と結びつくことで、ジヒドロテストステロン(DHT)という物質に変化します。このDHTが毛根の働きに影響を与えると、髪が成長する期間(成長期)が短くなる傾向があります。
通常は2〜6年ほどある髪の成長期が短くなることで、十分に太く長い髪が育ちにくくなり、結果的に薄毛が進行していくのです。
ただし、医師の判断のもとで適切な治療を行えば、進行を抑えたり、現状を維持したりすることは可能です。治療による効果には個人差がありますが、早期の相談と継続的なケアが大切です。
日本人男性の発症率と年齢
日本人男性のおよそ30%がAGAを発症するといわれており、決して珍しい症状ではありません。年齢別に見ると、20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降では40%以上と報告されています。
年齢が上がるにつれて発症率は増加する傾向がありますが、20代でも10人に1人の割合で発症している計算です。
若い世代でのAGAは、進行のスピードがやや早い傾向にある一方で、毛根の働きが保たれていることも多く、医師の判断のもとで治療を行うことで進行を抑えられる可能性があります。
「まだ若いから大丈夫」と自己判断せず、抜け毛が増えた、髪の密度が減った、生え際が下がったなどの変化に気づいたら、早めに専門の医療機関に相談することを検討しましょう。
AGAの進行を抑える3つの治療法

AGAの進行を抑えるには、医師の判断のもとで適切な治療を受けることが一般的です。主な治療法には「内服薬」「外用薬」、そしてそれらを組み合わせた治療の3つがあります。
どの方法が合うかは、薄毛の進行度や体質などによって異なります。そのため、専門の医療機関で相談し、自分に合った治療方針を立てることが大切です。
内服薬で抜け毛の進行を抑える仕組み
内服薬は、AGAの原因の一つとされる物質(DHT)が過剰に生成されるのを抑えることで、抜け毛の進行を緩やかにすることが期待されています。
医療機関で処方される代表的な薬には、フィナステリドとデュタステリドがあります。どちらも体内の酵素(5αリダクターゼ)の働きに関わりますが、作用する範囲が異なるとされています。どちらの薬を使うかは、症状や体質、年齢などをもとに医師が判断します。
服用の際は、医師や薬剤師の指示に従い、用法・用量を守ることが重要です。効果のあらわれ方には個人差がありますが、一定の期間継続することで変化を感じる場合もあります。自己判断で中断せず、疑問や不安がある場合は必ず医療機関に相談しましょう。
外用薬で発毛を促す方法
外用薬は頭皮に直接塗布することで、毛母細胞を刺激し、発毛を促す作用があるとされています。
ミノキシジル外用薬は、日本で唯一、発毛効果が承認されている有効成分を含む外用薬です。血管を拡張して血流を改善することで、毛母細胞に栄養を届けやすくします。
朝晩の1日2回、気になる部分に塗布するのが一般的な使用方法です。 使用開始後3か月から4か月で、抜け毛の減少や産毛の発生など、効果の兆しが現れ始める方もいます。内服薬と併用することで、抜け毛予防と発毛促進の両面からアプローチでき、より高い効果が期待できます。
治療効果が出るまでの期間
AGA治療の効果のあらわれ方には個人差がありますが、一定期間続けることで変化を感じる場合があります。効果が出るまでに時間がかかる理由の一つに、髪の生え変わり周期(ヘアサイクル)が関係しています。
治療を継続することで、髪質や抜け毛の変化を感じるまでに時間がかかる場合があります。個人差はありますが、治療を数か月続けることで抜け毛の変化や髪質の変化に気づく方もいます。
変化を感じる時期や程度には差があり、すぐに効果が現れない場合もあります。もし治療を続けても変化を感じにくい場合は、医師と相談して治療方針を確認することが大切です。
AGAの早期治療が重要な理由
AGAは早期に治療を始めることで、進行を抑えたり、髪の状態を維持したりする可能性があります。放置すると薄毛の進行が進む場合もあるため、抜け毛や生え際の変化に気づいたら、初期段階で医師に相談することが大切です。
AGA発症初期ほど変化を感じやすい理由
AGAは、発症初期の段階では毛根が比較的活動しているため、治療を始めた場合に髪の状態に変化を感じる方もいます。
毛根の機能が低下する前であれば、医師の判断のもと処方される治療薬により、ヘアサイクルに影響を与え、髪の状態を維持するサポートが期待できる場合があります。
一方で、薄毛が進行している場合は、治療をしても髪の状態の変化を感じにくいことがあります。個人差が大きいため、治療方針や進行状況は医師と相談することが大切です。
AGAを放置すると起きる可能性がある3つのこと
AGAを放置すると、進行が進む場合があります。
1つ目は、薄毛の範囲が広がる可能性です。AGAは進行性のため、何もしない場合に前頭部や頭頂部の髪の状態が変化することがあります。
2つ目は、毛根の機能低下です。長期間放置すると毛根の働きが弱まることがあり、その段階では投薬治療による変化が感じにくくなる場合があります。
3つ目は、治療にかかる期間や費用の増加です。進行した状態から治療を始めると、髪の状態が安定するまでに一定期間かかることがあり、費用負担も増すことがあります。
早めに抜け毛や髪の変化に気づいた場合は、医療機関に相談することが大切です。
セルフチェックで分かる髪の変化のサイン
AGAの初期段階では、日常生活の中で髪の変化に気づくことがあります。以下は一般的な髪の変化の例です。
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シャンプー時や起床時に抜け毛の量が増えた
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髪の毛のハリやコシが以前より弱くなった
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前頭部の生え際が少しずつ後退している
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頭頂部やつむじ部分の地肌が見えやすくなった
また、親族に薄毛の方がいる場合、遺伝的な要因で髪の変化が起こりやすい傾向があると指摘されています。
これらの変化に気づいた場合は、自己判断せず、医師に相談することが大切です。専門のクリニックや病院での診察により、適切な情報や対応方法を確認できます。
AGA治療を継続するための正しい知識
AGA治療は長期的な取り組みです。治療中に起こる変化や、継続する理由を正しく理解することで、不安なく治療を続けられます
初期脱毛について
治療開始後1か月から3か月の間に、一時的に抜け毛が増えることがあります。これは「初期脱毛」と呼ばれる現象で、治療薬使用時に報告される場合がある髪の変化の一例です。
ミノキシジルの外用薬や、フィナステリド・デュタステリドの内服薬と併用した場合にも見られることがあります。ただし、すべての方に起こるわけではなく、個人差があります。
初期脱毛が起こった場合でも、過度に心配せず、医師の指導のもとで治療を続けることが一般的です。髪の成長や変化には時間がかかる場合があるため、経過を観察しながら治療を継続することが推奨されます。
治療を中断した場合の注意点
AGA治療は、継続して使用することが前提となることがあります。治療薬の服用を中断すると、薬の影響が体内で薄れ、髪の状態に変化が出る場合があります。
治療で毛量が維持できていたとしても、自己判断で中止すると以前の状態に戻ることが報告されるケースもあります。
減薬や中止を検討する場合は、必ず医師に相談してください。医師の指導のもと、経過を確認しながら段階的に薬を調整する方法もあります。治療を中断した後も短期間は良い状態が維持されることもありますが、長期的には再び進行する可能性があるため、経過観察が重要です。
費用面で工夫しながら治療を続ける方法
AGA治療は長期的な取り組みになるため、費用面の工夫も重要です。ジェネリック医薬品を活用することで、薬の種類や有効成分が先発品と同じである場合が多く、治療費を抑えられることがあります。
ただし、薬の種類や価格はクリニックによって異なるため、詳細は医師や薬剤師に確認してください。
また、オンライン診療を利用すると、通院にかかる時間や交通費を軽減できます。予約から診療、薬の受け取りまで利用できるサービスもあり、忙しい方でも治療を継続しやすくなる場合があります。治療を継続する際は、費用や通院の利便性も考慮しつつ、医師と相談しながら進めることが一般的です。



