ピロリ菌が引き起こす病気、検査・除菌方法、保険の適用など。専門医がお答えします。
みなさんお待たせしました。お待たせし過ぎたかもしれませんし、誰もお待ちではないかもしれません。
今回は、胃の病気と関連が深いとされる「ピロリ菌」についてです。
と、その前に・・・
名古屋市天白区の内科、消化器内科、消化器内視鏡、胃カメラ、大腸カメラ、コロナの検査、コロナワクチン、日帰り大腸ポリープ切除といえば天白橋内科内視鏡クリニックの院長野田です。
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暇つぶしによろしければお聞きください。
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最初に。ピロリ菌の治療自体は決まっていますし除菌率もかなり高いのでどこのクリニックでも可能ですが、除菌の適応になる人や除菌判定の方法、除菌後の経過観察はぶっちゃけ消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医(でも微妙な奴はおるが・・・)とその他の先生(でもわかっている人もおられるが・・・ここでは分かりやすく簡潔に。)では知識が全く違います。中途半端な治療や指導は除菌したら胃癌にならないなどといった大きな間違いに直結しますので、消化器病学会専門医、消化器内視鏡専門医にご相談されることをお勧めします。
話は戻って、響きはかわいい?けど実は色々な病気を引き起こす原因にもなる全然かわいくない「ピロリ菌」について、皆様の疑問にお答えさせていただきます。
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①ピロリ菌ってなに?どんな病気を引き起こすの?
ピロリ菌は正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ菌」と言います。(以下、ピロリ菌)
主に人の胃などに生息する細菌で、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、胃癌(がん)発症の原因菌として知られています。
「え?胃の中って胃酸があるのに菌が生きていられるの?」って思われる方もみえますが、ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素で胃酸を中和することによって、強酸性の胃の中でも生息することのできるなかなか厄介な菌なのです。
②ピロリ菌に感染している人はどのくらいいる?感染経路は?
なんと、ピロリ菌は日本人の約半数にあたる推定6000万人が感染しているとされ、特に50歳以上の約7割が感染していると言われています。
もしかしたらあなたの胃にもピロリ菌はいるかもしれない!?のです。
では、ピロリ菌はどこから胃の中に入ってしまうのでしょうか?
正確なことは今でもわかっていませんか、主に口から胃の中に入ると考えられています。特に幼少期に井戸水を飲んでいたり、井戸水で野菜を洗っていたりすると感染の可能性が高いとも言われています。
③ピロリ菌がいると胃癌(がん)になる?
ピロリ菌感染者の全てが胃癌になるわけではありませんが、ピロリ菌の除菌治療は胃癌発症の回避につながると考えられ、将来的な胃癌患者数の減少に期待が持たれています。
しかし、感染したままにしておくと胃炎や胃潰瘍をはじめとして、胃がんを引き起こしてしまうこともあります。
胃のむかつき、胃の痛み、吐き気などの自覚症状、あるいは胃がんを予防したい、家族で胃の疾患をお持ちであるならば、一度検査されることをおすすめします。
④ピロリ菌による症状はある?
- 胃がシクシク痛む
- 胃がもたれる感じがする
といったものがあります。
胃の中に存在するピロリ菌の影響によって、保菌者(胃のなかにピロリ菌がいる人)の3割程度において何らかの病気を発症させてしまうことが分かっています。
冒頭にも書きましたが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍をはじめ、胃がんを発生させる要因であることが知られています。
ピロリ菌が存在するだけで、上記のような痛みや不快感が生じることはなく、保菌者の7割程度は症状がない「健康保菌者」や「無症状キャリア」と呼ばれています。
ただ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍はピロリ菌を除去することによって再発率が減少すると報告されており、胃がんの発生率も抑制できると証明されています。
そのため、胃の具合がいつも良くない方や家系によって胃がんの心配をお持ちの方であれば、お気軽に当院の医師にご相談ください。
⑤ピロリ菌がいる?どうやって検査するの?
ピロリ菌の検査には、6つの方法が存在します。
大きく分けて内視鏡(胃カメラ)を使用する検査法と使用しない検査法に分けることができます。
保険適用としては、内視鏡を使用した検査法において認められており、内視鏡を使用しない検査法については自費扱いとなっていますが、胃の全体を診断することが可能な検査になります。
○内視鏡(胃カメラ)を使用しない検査法には
(ア)尿素呼気試験法
胃粘膜組織の中にいるピロリ菌にはウレアーゼ活性によってアンモニアと二酸化炭素を生成する働きがあり、吐く息の中に炭酸ガスとして排出されます。尿素呼気試験法ではこの原理を利用します。まず呼気を採取し、特殊な尿素製剤を服用して頂いて、再び呼気を採取してピロリ菌の存在を判定します。ピロリ菌が認められる場合には、呼気の中に多くの炭酸ガスが検出されることになります。検査自体は30分程度で終了し、簡単な検査で患者さんへの負担がないのが特徴です。
(イ)抗体測定
血中や尿中に、ピロリ菌に対する抗体の存在を調べます。私たちの体内に細菌が侵入すると抗体が作られますが、その原理を活用した検査法です。血中抗体測定の場合には採血を行って血液中の抗体を、尿中抗体検査の場合には尿検査によって抗体を確認します。共に食事に関係なく検査が可能で、特に尿中抗体検査は体への負担が少ないのが特徴です。
(ウ)糞便中抗原測定
糞便中のピロリ菌の抗原を調べる方法で、体への負担が少ないのが特徴となっています。
なお当院では、胃カメラ以外では(ア)尿素呼気試験法と(イ)抗体測定を実施していますので、お気軽にご相談ください。
一方、
内視鏡(胃カメラ)を使用した検査法は、内視鏡(胃カメラ)を使用する検査は、胃の組織の一部を採取して調べる検査になりますが、採取した組織にピロリ菌が確認できなければ、「陰性」と判定されます。ただ、胃の組織の一部を採取してピロリ菌がいるかを調べる検査であるため、胃の中をすべて調べられる訳ではありません。
●内視鏡(胃カメラ)を使用した検査法
(ア)培養法
採取した胃粘膜の組織をすりつぶしてピロリ菌の発育環境下において培養し、ピロリ菌がいるかどうかを判定します。培養にはある程度の時間が必要であり、判定できるまでに5~7日ほどの日数がかかります。
(イ)迅速ウレアーゼ試験
胃粘膜組織の中にいるピロリ菌が、尿素を分解してアンモニアに変える「ウレアーゼ活性」を利用して判定する方法です。胃粘膜より採取した組織を特殊な検査試薬内に入れ、反応液の色の変化によって判定します。結果が判定されるまで短時間であることが特徴です。
(ウ)組織鏡検法
採取した胃粘膜の組織の一部に特殊な染色をして、顕微鏡で観察しピロリ菌の存在を診断する方法です。
⑥ピロリ菌の検査や治療に保険は適用される?
○まずはピロリ菌の検査について。
上記の通り、ピロリ菌の検査にはさまざまな種類がありますが、その中でも「内視鏡(胃カメラ)を使用した検査法」において健康保険の適用とされています。「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」「早期胃がんの治療後」などの病気をはじめ、現在は「慢性胃炎」についても健康保険の対象となっています。
○次にピロリ菌検査・除菌が保険適用される流れ
医師の診断のもとに内視鏡(胃カメラ)を使用した検査を受け、ピロリ菌の感染を確認します。その結果、ピロリ菌による症状であることが確認されれば除菌治療を行うことになります。平成25年2月22日よりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が保険適応となりました。ピロリ菌に対する除菌治療は先ず平成12年11月より胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対して認められるようになり(1次除菌)、平成19年8月より1次除菌不成功例に対する2次除菌治療が認められ、さらに平成22年6月からは胃MALT(マルト)リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後の患者さんにも保険適応が拡大されました。
⑦ピロリ菌をやっつける方法とその後の流れは?
除菌治療には抗生物質や胃酸を抑える薬を7日間服用します。この服薬によって約7割から8割の方が除菌に成功すると考えられています。除菌治療後には、1か月以上経過してから除菌できたかどうかを検査します。1回目の除菌(1次除菌)後にピロリ菌が確認された場合には、服用する薬剤を変更して2次除菌を行うことになります。2次除菌までで約9割が除菌に成功すると考えられています。また除菌後には、再発の確率が1年間で0.2%と、再感染のリスクがかなり抑えられることがわかっています。ただ、除菌が成功した後においても必ずしも病気にならない訳ではありませんので、定期的(一年に一回)に内視鏡(胃カメラ)検査を受けることが大切です。
⑧こんな症状があったら
ピロリ菌の感染が疑われる症状やどのくらいの頻度で胃の検査をやった方がいいかを簡単に知ることができるようにフローチャート(簡易診断)を作成してみました。自覚症状(咽頭痛、むねやけ、胃の痛み、吐き気、胸痛など)がある方も自覚症状がない方も一度やられることをお勧めします。
【診断のやり方】
まず、自覚症状(咽頭痛、むねやけ、胃の痛み、吐き気、胸痛)があれば、迷う必要はありません。まず胃カメラ検査を受けましょう。
上記のような自覚症状がない方で、定期的に胃カメラ検査を受けられていないのであれば、とりあえず一度胃カメラ検査を受けてください、その結果によって、今後の方針が変わってきます。胃カメラを受けて、もし「萎縮性胃炎」が確認されなければ、毎年バリウム検査を受けるか、2年に1度の胃カメラ検査を続けていただければ大丈夫かと思われます。
しかし、もし胃カメラで萎縮性胃炎が見つかった場合、ピロリ菌に感染している若しくは過去にピロリ菌に感染していた可能性が高いですので、まずピロリ菌の検査を受けてください。もしピロリ菌感染が確認されれば、抗生剤による除菌を受けていただきますが、その後も継続的に胃の状態を確認する必要がありますので、毎年胃カメラを受けるようにしてください。
萎縮性胃炎があって、ピロリ菌検査が陰性だった方も、過去にピロリ菌に感染していた可能性が強く疑われますので、同様に毎年胃カメラを受けていただくことをお勧めします。
⑨専門医から皆様へ
「最近胃がもたれる」や「胃がシクシク痛む」などの症状がある方はもちろん、現時点で症状のない方もピロリ菌が胃の中にいるかもしれません。胃癌などピロリ菌が原因の病気になってしまう前に、意識して胃の状態を確認するようにしましょう。
当院では胃カメラを用いたピロリ菌の検査や胃カメラを用いない尿素呼気試験法や抗体測定のピロリ菌検査も実施しています。お気軽に当院にご相談ください。
全ては患者さんの「検査しとけばよかった・・・」を無くしたいから。
詳しくは当院のホームページ(←こちらをクリック)からどうぞ。
令和3年9月17日 天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣
・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
・がん治療認定医
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